「がんペプチドワクチン」療法とは?


「がんペプチドワクチン」療法とは?

ウイルスが侵入した場合の免疫システム

ウイルスが侵入した場合の免疫システム 本題の「がんペプチドワクチン」の話に入る前に、ウイルスが体内に侵入した場合の免疫システムの動きを具体的に見てみますと以下の通りです。
まず、体内にウイルスが侵入すると、監視役として働く「樹状細胞」が異変を察知しウイルスの特長を記憶します。
そして、「樹状細胞」は攻撃役である「キラーT細胞」に異物の特長を伝達します。異物の特長を把握した「キラーT細胞」はウイルスに侵された細胞を攻撃します。この一連の防御システムを免疫システムと呼んでいる訳です。
がん細胞は、もともとは自分の体の細胞ですが勝手に増殖を繰り返すため、「樹状細胞」は非自己の異物と判断して「キラーT細胞」に攻撃させます。
しかし、がん細胞の増殖は非常に早いスピードで際限なく広がりますから、「キラーT細胞」はがん細胞をいくら殺してもがん細胞は増えてしまう訳です。
その結果、がんの病巣は広がり転移して患者は死に至ることになります。

ペプチドとは?

ペプチドとは? 人体の免疫システムでは「樹状細胞」は攻撃役である「キラーT細胞」に異物の特長を伝達し、異物の特長を把握した「キラーT細胞」はがん細胞を攻撃します。
この異物の特長とは、がん細胞の表面の小さなタンパク質のかけらです。
その小さなタンパク質のかけらを目印として「キラーT細胞」はがん細胞を攻撃するのです。
その小さなタンパク質のかけらを抗原と言い「キラーT細胞」はこの抗原の中の小さな断片を見つけます。この小さな断片を「ペプチド」と呼んでいます。

「がんペプチドワクチン」療法の仕組み

「がんペプチドワクチン」療法の仕組み 幸いなことに、この「ペプチド」は人工的に合成することができる様になりました。
従って、誰もが考える様に、「ペプチド」を体内に投与すれば「ペプチド」によって刺激された「キラーT細胞」が活性化されて増殖を繰り返し、がん細胞を激しく攻撃するようになります。
この一連の動きを利用してがん細胞を退縮させ、がん病巣を消滅させようとする治療法を「がんワクチン」療法と呼び、「ペプチド」を薬剤として使用する治療法を「がんペプチドワクチン」療法と呼んでいます。
この様な「がんペプチドワクチン」療法開発の鍵となった3つの発見は、「がん細胞上の白血球抗原上に結合するアミノ酸(ペプチド)が患者のキラーT細胞から攻撃されること」と「ワクチンとしてペプチドを投与するとキラーT細胞が増殖すること」と「キラーT細胞はがん局所へ侵入してがん細胞を殺傷すること」です。