世界で進む「がんペプチドワクチン」研究


世界で進む「がんペプチドワクチン」研究

アメリカ国立がん研究所NCI

アメリカ国立がん研究所NCI 「がんの免疫療法」とは大別すると2つに分けられます。
1つは従来から行われている「がんの免疫療法」で、患者が持つ免疫機能を高めてがん細胞の増殖を抑える療法です。多くの場合、患者自身の免疫細胞を取り出して活性化した後、再び点滴で患者の体に免疫細胞を戻してがん治療を行います。
この分野で世界をリードするのは「アメリカ国立がん研究所NCI」です。
「アメリカ国立がん研究所NCI」では米国屈指のがんセンターと大学27施設から一流のがん免疫療法研究者が参加して、有望な抗がん剤の発見と臨床試験を実施することを目的に共同研究を行っています。
その共同研究は「がん免疫療法試験ネットワークCITN」と呼ばれ世界のがん免疫療法のトップランナーとも言えます。
只、この様な従来のがん免疫療法は白血病やリンパ種に対しては顕著な効果を発揮していますが、残念ながら他の固形がんに対する幅広い効果は確認されていません。

「がんペプチドワクチン」研究は日本がトップランナー

「がんペプチドワクチン」研究は日本がトップランナー もう1つの「がんの免疫療法」は、言うまでもなく「がんペプチドワクチン」を用いる療法です。ウイルスに感染した細胞やがん細胞を殺傷する能力を持つ「キラーT細胞」や「ナチュラルキラー細胞」を「がんペプチドワクチン」で活性化させてがん細胞を消滅させる療法については、既に多くの項で述べてきました。
この「がんペプチドワクチン」療法は、現在のところ日本が世界のトップランナーとなっています。
しかし、上記の「アメリカ国立がん研究所NCI」も、「がんの免疫療法」研究の軸足を従来の「がんの免疫療法」から「がんペプチドワクチン」療法に移しつつあると言えます。
それは、我が国の「がんペプチドワクチン」研究の第一人者と言える中村祐輔教授が、昨年、4月にシカゴ大学医学部血液腫瘍内科教授兼個別化医療センター副センター長に就任したことをからも読み取れます。
シカゴ大学は「アメリカ国立がん研究所NCI」が主宰する「がん免疫療法試験ネットワークCITN」の主要メンバーだからです。

「日米を股に掛けて「がんペプチドワクチン」療法の研究を推進 現在、中村祐輔教授はシカゴ大学教授と東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センターシークエンス解析分野特任教授を兼務していますから、今後は日米を股に掛けて「がんペプチドワクチン」療法の研究を推進することになります。
勿論、オンコセラピーサイエンス鰍フ創業者で筆頭株主であることには変わりありませんから、同社の研究にも関わっていくことは間違いありません。
只、気になるのは、中村教授が以前から我が国の厚生労働省のがんに対する政策対応を三等国家・四等国家と批判してきたことです。
世界で競争を繰り広げる最先端のがんの研究者にとって、厚生労働省の旧態依然の時間が掛かる審査体制は致命的だからです。
今後、中村教授が研究の軸足を米国に移してしまうとすれば、日本はまたしても世界的な頭脳を流出させたことになります。